自分の言葉で過去を整理すると、なぜ納得できるのか
人間関係の本を読んだ。誰かに相談して、アドバイスももらった。そのときは「なるほど」と思えた。それなのに、職場に戻ると、また同じところでつまずいている。
こうした経験がある方は少なくありません。そして多くの人は、「分かっているのに変われない自分」を、また責めてしまいます。
先に結論をお伝えします。
分かったのに変われないのは、意志が弱いからではありません。その「分かった」が、他人の言葉でできていたからです。人が心から納得できるのは、自分の言葉で整理されたときです。
この記事では、なぜ自分の言葉で過去を整理すると納得できるのかを、実際にセッションを受けた方の声とともに説明します。
分かったのに、変われない理由
本や専門家の説明は、多くの場合、正しいことを言っています。だから読んだり聞いたりしたときには「その通りだ」と思えます。
ただ、「正しいと思える」ことと「腑に落ちる」ことは別のものです。他人の言葉で説明されると、頭では理解できても、心のどこかに「でも、自分の場合は少し違う」という感覚が残ります。この小さな引っかかりが、日常の場面で古い反応に戻ってしまう入り口になります。
認識デザインラボのセッションを受けた方は、この感覚をこう表現していました。
人の言葉だと、「そうじゃない」「そうなのかな」という気持ちが10%ぐらい出る。
残りの90%で納得していても、この10%がある限り、本当の意味では自分のものになりません。
脳がつくる世界は、その人の言葉でできている
なぜ他人の言葉では納得しきれないのでしょうか。
人がそれぞれ見ている世界は、その人自身の言葉で組み立てられています。同じ「上司に注意された」という出来事でも、ある人は「否定された」と受け取り、別の人は「期待されている」と受け取ります。どんな言葉で出来事を受け取るかは、その人がこれまでの人生で積み重ねてきた言葉によって決まっています。いわば、その人オリジナルの言葉でプログラミングされた世界です。
認識デザインラボでは、人の判断基準には5つの特徴があると考えています。

- みんな持っている
- みんなバラバラ
- 一つにそろえても問題になる
- どの判断基準も不完全
- 不完全なのに、無意識で完全だと思っている
判断基準がみんなバラバラである以上、他人の言葉は、どれだけ正しくても他人の判断基準から見た説明です。自分の判断基準とは、必ずどこかでずれます。先ほどの「10%の引っかかり」は、このずれから生まれています。
判断基準の5つの特徴や、誰もが自分の観点という「VR眼鏡」をかけて生きているという考え方は、「環境や人を変えても、同じ人間関係を繰り返すのはなぜか」でくわしく解説しています。
誰の言葉で説明するか
人間関係や自分自身の悩みを相談できる場所は、いくつもあります。どれにもそれぞれの役割があり、どれが正しいというものではありません。違いがあるとすれば、それは悩みを誰の言葉で説明するかです。
相談先 | 悩みを説明する言葉 |
|---|---|
占い | 星やカードなど、外の基準の言葉 |
カウンセリング・心理系の相談 | 心理学の理論や、カウンセラーの言葉 |
コーチング | 目標や行動計画の言葉 |
認識デザインラボ | 本人の言葉だけ |
認識デザインラボのセッションでは、こちらが用意した言葉で悩みを説明し直すことはしません。その人が話した言葉を、その人の言葉のまま整理していきます。
自分の言葉で過去を整理すると、何が起きるか
ここからは、実際にセッションを受けた方の話を、ご本人の了承を得て紹介します(個人が特定されないよう、一部を変えています)。
「気持ちを伝えられない」の奥にあったパターン
その方の課題は、自分の気持ちを相手に伝えることでした。人からの評価を、つい気にしてしまう。そう話していました。
セッションでは、課題に対してどう感じているか、そのときどんな行動をとっているか、相手の反応を受けてさらにどう動いているかを、ご本人の言葉のまま順番に整理していきました。すると、いつも同じ流れに陥っていたことが見えてきました。
- 口論や言い争いのように、話が通じ合わない場面になる
- そんな場面にいる自分を、「情けない、弱い、嫌な自分」だと思い込む
- 相手の顔色をうかがい、言い返されるのが怖くなる
- 通じ合わないからと、あきらめてしまう
- げんなりして、見て見ぬふりをし、我慢する
気持ちを伝えられないのは、性格が弱いからではありませんでした。この流れを、場面が変わってもいつも繰り返していたのです。
「すんなり頭に入ってきた」理由
この方は、セッションの感想をこう話してくれました。
自分の言葉で整理してもらっているから、すんなり頭に入ってきた。抵抗感がなかった。
自分の言葉で、そのときどきの感情や行動の点と点を繋いで整理してくれるから、納得感がある。いつもそのパターンをやっているなと思っていたことを言語化して、整理できたのが良かった。
ここで大切なのは、パターンそのものは、ご本人がうっすらとは気づいていたということです。新しい知識を教わったわけではありません。もともと自分の中にあった言葉が、点と点として繋がり、一つの流れとして見えるようになった。それが納得の正体です。
文字にすると、自分を客観的に見られる
この方は、こうも話していました。
そのときどきではうっすら思っていたことでも、実際に文字にして整理されると、自分を客観的に見られた。
頭の中にあるうちは、感情と自分が一体になっていて、外から眺めることができません。自分の言葉が文字として目の前に並ぶと、それは「自分そのもの」ではなく、「自分が繰り返しているパターン」として見えるようになります。他人の言葉ではないので、反論したくなる10%もありません。だから、抵抗なく自分を客観視できます。
正確な現在地が見えると、変えることが明確になる
自分を客観視できると、自分がいまどこにいるのかが正確に分かります。
先ほどの方であれば、「気持ちを伝えられない」という漠然とした悩みが、「話が通じない場面で自分を情けないと思い込むところから、我慢までの流れを繰り返している」という具体的な現在地に変わりました。現在地が具体的になれば、どこを変えればいいのかもはっきりします。この方の場合、変える必要があるのは「気持ちの伝え方」ではなく、話が通じない場面で自分をどう受け取っているか、という最初の一歩でした。
過去の出来事を整理するから、正確な現在地が見える。だから、変われる。
認識デザインラボでは、観点の問題は理解することで、問題が問題ではない状態になると考えています。自分の言葉で整理することは、その理解にたどり着くための道筋です。
また、こうして本人の言葉で整理したことを、どこから来て、今どこにいて、どこへ向かうのかの地図として、セッションシートに残していきます。癒すために掘り下げるのではなく、地図をつくるために整理するので、話す範囲はご自身で決められます。
自分の言葉を、全部聞いてもらったことはありますか
振り返ってみると、自分の話を最後まで聞いてもらい、しかもそれを自分の言葉のまま整理してもらった経験がある人は、ほとんどいません。
多くの場合、相談をすると、途中で相手の意見や解釈が入ります。それは善意からですが、そのたびに、話している本人の言葉は少しずつ相手の言葉に置き換わっていきます。
だからこそ、自分の言葉だけで過去を整理する体験は、多くの人にとって初めての納得の体験になります。誰かに説明されて納得するのではなく、自分の言葉によって自分が納得する。その違いが、納得の深さの違いになります。
よくある質問
話すのが苦手でも大丈夫ですか
大丈夫です。うまく話す必要はありません。言葉に詰まったところや、言い直したところも含めて、その人の言葉です。こちらから質問をしながら、少しずつ言葉にしていきます。
つらい過去を全部話さないといけませんか
話したくないことを無理に話す必要はありません。扱うのは、いまの人間関係で繰り返している場面と、そのときの受け取り方です。過去を掘り下げることそのものが目的ではありません。
カウンセリングやコーチングを受けていても利用できますか
利用できます。ただし、心身の不調で医療機関や専門家の支援を受けている場合は、まずその担当の方にご相談ください。認識デザインラボのセッションは、医療や心理療法ではありません。
まとめ
- 分かったのに変われないのは、その「分かった」が他人の言葉でできていたから
- 人の世界は、その人自身の言葉で組み立てられている。判断基準はみんなバラバラなので、他人の言葉はどこかでずれる
- 自分の言葉で、感情や行動の点と点を繋ぐと、抵抗なく納得できる
- 自分の言葉が文字として並ぶと、自分を客観的に見られる
- 過去の出来事を整理するから、正確な現在地が見える。だから、変われる
我慢したあとに自分を責めてしまう方は、「人間関係がうまくいかないと、自分を責めてしまうとき」もあわせてお読みください。
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※認識デザインラボのセッションは、医療や心理療法ではありません。心身の不調が続いている場合は、医療機関にご相談ください。