見ている世界は絶対ではない。錯視で分かる「脳の4つのクセ」
相手の一言に「否定された」と感じたり、表情を見て「怒っている」と思ったりする。そのとき私たちは、見たまま・聞いたままを受け取っているつもりでいます。
先に結論をお伝えします。私たちが見ている世界は、目に映ったそのままではなく、脳が作ったものです。これは性格の問題ではなく、人が誰でも持っている脳のクセによるものです。だから、人間関係がうまくいかないのは、あなたのせいでも、相手のせいでもありません。
この記事では、一枚の錯視の図を入り口に、脳の4つのクセと、職場での見え方を確かめる4つの問いを紹介します。
同じ大きさなのに、上が大きく見える

上の図を見てください。プリンのような形が、上下に2つ並んでいます。多くの人には、上のプリンのほうが大きく見えます。
ところが、2つはまったく同じ大きさです。画面に指を当てて幅を測ってみると、同じだと分かります。
面白いのは、同じ大きさだと分かったあとでも、上のほうが大きく見え続けることです。知識で分かっていても、見え方は勝手には変わりません。見え方は、自分で選んでいるのではなく、脳が自動で作っているからです。
錯視に表れている、脳の4つのクセ
この図を見ているとき、脳の中では次のことが起きています。
1. 部分しか見ていない
脳は、図の全体を一度に比べていません。上のプリンの下の辺と、下のプリンの上の辺という、一番近い部分だけを見ています。
2. 違いで見ている
その近い部分で、短い辺と長い辺の違いだけを取り出しています。違いが目に入ると、上のプリン全体が大きく見えてきます。
3. 過去と繋げて見ている
図に描かれているのは、黄色と茶色の平らな形です。それでも「プリンだ」と分かるのは、過去にプリンを見た記憶と繋げているからです。
4. 有限化して見ている
一度「プリンが2つ」と決めると、それ以上は見直さなくなります。形を限られた枠に収めて、「こういうものだ」と決めて見ています。
この4つは、目の錯覚だけで働いているわけではありません。人の言葉や態度を見るときにも、同じように働いています。
職場では、相手をこう見ている
たとえば、職場ではこんな場面がよくあります。
- 部分しか見ていない:会議で相手が一度だけ腕を組んだのを見て、「反対されている」と感じる
- 違いで見ている:自分と仕事の進め方が違う同僚の、違うところばかりが目につく
- 過去と繋げて見ている:以前きつく叱られた上司と口調が似ている人に、話す前から身構えてしまう
- 有限化して見ている:「あの人は細かい人だ」と決めると、細かい場面ばかりが目に入り、それ以外が見えなくなる
どれも、相手を正しく見ようとした結果ではなく、脳が自動で作った見え方です。そして相手もまた、同じクセを通して、こちらとはまったく別の画面を見ています。すれ違いが起きるのは、どちらかが悪いからではなく、お互いが違う画面を見ていることに気づいていないからです。
環境や人を変えても同じすれ違いが繰り返される仕組みは、「環境や人を変えても、同じ人間関係を繰り返すのはなぜか」でくわしく解説しています。
見え方を確かめる4つの問い
錯視と同じで、クセそのものを消すことはできません。けれど、「今、自分にはこう見えている」と気づくことはできます。相手の言葉や態度に心がざわついたら、次の4つを自分に問いかけてみてください。紙に書き出すと、より分かりやすくなります。
- どこを切り取った? 相手のどの一言、どの場面を見てそう感じたか(部分)
- 何と比べた? 自分のやり方や、ほかの人と比べていないか(違い)
- いつの経験と重ねた? 前にも似た気持ちになった相手や場面はないか(過去)
- 「こういう人」と決めていない? その人の、まだ見ていない面はないか(有限化)
答えがすぐに出なくてもかまいません。問いかけた時点で、「相手はこういう人だ」という見え方から一歩離れて、「自分にはこう見えている」と見られるようになります。それだけで、次にかける言葉が変わることがあります。
見え方が分かると、相手と出会い直せる
錯視の図は、同じ大きさだと分かったあとも、上が大きく見え続けます。人間関係も同じで、クセがなくなるわけではありません。変わるのは、見えているものを「絶対の事実」として扱わなくなることです。
認識デザインラボでは、見え方の問題は、仕組みを理解することで問題ではなくなると考えています。自分の見え方が「脳が作った一つの画面」だと分かったとき、目の前の相手は「苦手な人」ではなく、まだ出会えていない一人の人として見え始めます。
まとめ
- 同じ大きさの図形が違う大きさに見えるのは、見ている世界を脳が作っているから
- 脳には「部分しか見ていない」「違いで見ている」「過去と繋げて見ている」「有限化して見ている」という4つのクセがある
- このクセは、職場で相手の言葉や態度を見るときにも働いている。相手も別の画面を見ている
- クセは消せないが、「どこを切り取った?」「何と比べた?」「いつの経験と重ねた?」「こういう人と決めていない?」と問いかけると、見え方に気づける
自分の言葉で過去の出来事を整理すると、なぜ見え方に納得できるのかは、「自分の言葉で過去を整理すると、なぜ納得できるのか」で紹介しています。
自分がどんな見え方のパターンを持っているのかを一緒に確かめたい方は、初回無料相談(90分)をご利用ください。
※認識デザインラボのセッションは、医療や心理療法ではありません。眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが続くといった状態がある場合は、医療機関にご相談ください。職場でのハラスメントが疑われる場合は、社内外の相談窓口にもご相談ください。